書評(本)

「世界がもし100億人になったなら」の感想と書評(ネタバレあり)

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現状の世界の人口はどんどん増えているのですが、その人口が100億人になった場合の世界について、科学者が研究を元に様々な地球に関するデータを試算したのが、本書です。

このままいくと、人類にはとても暗い未来しか待っていないことを、本書では伝えています。

 

・著者「スティーブン・エモット」

著者のスティーブン・エモットはマイクロソフト・リサーチ計算化学研究所の所長です。

オックスフォード大学計算化学客員教授、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ計算生物学客員教授、英国国立科学・技術・芸術基金栄誉フェロー。

イギリスのケンブリッジで様々な分野の研究者からなる学際的チームを率いて幅広い科学研究を指揮し、科学の基本問題に取り組む先駆的アプローチを開発している人です。

研究所の研究分野は、分子生物学、免疫学、神経科学、植物学、気候学、生物地球化学、陸上・海洋生態学、保全生物学から、新分野である人工生命プログラミングや人工光合成まで多岐にわたる研究をしています。

その多岐にわたる研究の中で生まれた研究結果を元にして、本書の「世界がもし100億人になったなら」を執筆しています。

 

・世界がもし100億人になったなら?

本書では、研究者のデータを元に世界がもし100億人になったなら、地球がどうなってしまうのかについて書かれています。

結論としては、今のまま地球の人口が100億人になってしまえば、地球にとって悪いことしか発生しません。地球の温度はどんどん上がり、北極の氷が溶け、メタンガスが漏れでてさらに温度が上がります。

食料問題も深刻で、現在の農業のやり方と消費のペースで、100億人を食べさせることはできません。そして、食料を確保するために残された手段は、アマゾンなどの森林を伐採して農地を作るしかなく、そうすることで生物の多様性が大幅に失われ、さらに二酸化炭素を吸収してくれる森林が減ることになり、大気中の二酸化炭素濃度が増えていくことになります。

いろんなところで言われているように、水も地球上のかなりの場所で、使える水が満足に手に入らなくなり、数十億人が極度の水不足で暮らすことになります。海水を淡水化するという技術もありますが、海水を淡水化するためには多くの電力が必要になり、抜本的な解決にならないそうです。さらに、海水を淡水化したあとの廃棄物で海が汚染される心配もあります。

ほかにもエネルギー問題や、病気の蔓延などの問題もあります。

基本的に、本書には世界の人口が100億人になったら、人類にとって悪いことしか起こらないと書かれています。

by カエレバ

・結論

本書の中では、人口が100億人になった世界について書かれていて、その結果は人類にとって良いことは1つもない、さらには人類が滅亡するような流れで書かれています。

こういう本には、後半部分にその解決策が書かれていて、希望があるように書かれるのですが、本書からは生活を変えない人類への失望しか伝わってきません。

そして、最後に

わたしの知るなかでもっとも理性的で、もっとも頭のいいととある科学者(私の研究所で働いている、この分野の若い科学者です)に質問してみたことがあります。わたしたちが今直面している状況に対して、何かひとつだけしなければならないとしたら、何をするか、と。

彼の答えはこうでした。

「息子に銃の撃ち方を教えます」

と。

本書のラストはこう書かれていました。

本書では解決策を提示して希望を書くようなことはしてません。科学者としては現状はお手上げであり、人類の行動がとても大きく変わらないかぎり希望はなく、楽に死ねる方法を教えておくのが良いという結論で終わっています。

警告なのか、本当の諦めなのかわからないのが怖いですね。

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