書評(本)

「まんがで読破 徒然草」兼好法師 のあらすじと感想と書評

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久しぶりにブックオフに行ったら、ついつい楽しくなっちゃって「まんがで読破」シリーズをまた購入してしまいました。今回は、「徒然草」です。昔、学校の授業で習ったことはあったのですが、ただ「徒然草」という単語を覚えただけで、この本がなぜ現代の学校でも重要なものだと教えられていたのかわからない…のかただ単に自分が忘れてしまっただけなのか…どちらにしてもどういう作品なのか知りたかったので買ってみました。

 

・あらすじ

兼好法師は本名を卜部兼好(うらべかねよし)といい、江戸時代以降には吉田兼好と呼ばれていました。1283年〜1352年頃の鎌倉時代末期の歌人、随筆家です。

元々、神道の名門の吉田神社の神官を世襲する家系で、兼好法師の祖父の代からは宮中の事務官僚を兼務するようになるような名門の家柄でした。兄弟には天台宗の学僧として名高い慈遍がいます。

そのような家柄なので、兼好法師も早くから宮中で出世頭になり、どんどん出世をしていくのですが、地位や名誉のために奔走し、財産を築くことにばかり執着し、財産を気付けば今度は守ることに執着するような宮廷の生活にだんだんと嫌気がさしてきました。

時代背景として元が攻めてきて、元で活躍した武将たちに十分な恩賞を与えられず、世の中が貧しくなったり、武士の借金をすべてなくす徳政令が出されたが、その後に徳政令のせいで今度は金を借りることが出来なくなって、ますます世の中が不安定になってという時代もあって兼好法師は今の自分のままで本当に良いのかと悩みます。

朝成虫となって夕方には死んでいくカゲロウを見て、限られた人生を精一杯生きることを考え、宮廷での出世コースを捨てて比叡山に出家しました。

そして、都から離れたところの庵で静かに隠遁生活をしながら、世の中のことについて思うことを書き綴っていきました。

 

・今だからこそ大切にしたい生き方

兼好法師がとある街で宿がないときに、ある武士の家に泊めてもらうことになりました。そこで、その武士に兼好法師は出家した理由を聞かれ、宮廷での醜い権力争いに嫌気がさしたと答えました。そこで、その武士は兼好法師に

「子供はいますか?」

と聞きました。兼好法師は子供はいないと答えると、武士は、

「でしたら人の情愛の気持ちはわからないでしょう。」

と言われ、兼好法師はムッとして、情愛のことは学んできましたと答えます。しかし、武士は、

「子供が産まれて自分は変わりました。子供のおかげで本当の情愛を知り、子供のためだったら、媚びへつらったり欲に走ったり、飢えれば盗みもするかもしれない。それは、はたからみれば愚か者に見えるかもしれない。だから、先ほどの人たちは本当に愚かだと言えるのでしょうか? 

飢えや苦しみの多い時代が悪く、そう仕向けているのは政治ではないか? 衣食が足りているのに罪を侵す人が本当の罪人だと思う。」

ということを言いました。このことは現代社会でも通じることだと思います。今の日本は世界でも有数の裕福な国になっていて、食べることや生きることに困ることはほとんどなくなりました。しかし、生きることに困っていないのに犯罪をする人もいます。今の日本んは鎌倉時代末期の本当に辛い生活を送っている人たちから見たら罪人だらけかもしれません。足りているのに、満足しないで欲に溺れると幸せがなくなり、相手を妬んだり嫉妬したりします。そういう考えを捨て今こそ生き方を変えるべきなのだと思わされました。

 

・人生は短い

人生は短いということも説いています。カゲロウやセミから人生の儚さを学んだ兼好法師は、生に執着しすぎることなく、周りに振り回されない生き方を説いています。

現代は学力社会や競争社会で、一度人と違った人生を歩むと周りから白い目で見られますが、それぞれが自分の人生を精一杯生きているのならそれで良いのでは無いでしょうか?

学力や会社の肩書などに執着し、生かされているよりも自分の人生を真っ直ぐに見つめて生きている人の方が輝いていますし、そういう人でも生きやすい世の中の方が良いと思いました。

 

・兼好法師が現代に生きていたら

兼好法師がもし、現代に生きていたらエリートコースの官僚を辞めて宗教家か自己啓発本の作者かブロガーか起業家にでもなっていたような気がします。一般的に見ると落ちこぼれのような人になったかもしれません。しかし、こういう人が残した本が何百年たっても人に読まれているのです。

世の中の問題の本質と向き合い、ちゃんと自分の頭で考えるということは何時の時代でも通用する考えなのではないかと思います。それが、「徒然草」が現代でも学校で教えられる本当の意味なのではないでしょうか?

現代も兼好法師が生きていた時代のように世の中に不安が満ち溢れているので、こういった時代には兼好法師のように周りに流されないで、本当に大切なものは何かと考える人間が必要なのだと思いました。

by カエレバ

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