書評(本)

「2020年マンション大崩壊 牧野知弘」の書評と感想

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 最近の話題として「空家問題」があり、不動産に興味があるものとしては気になっているのですが、そのなかでマンションも今後はどうなっていくのかということも懸念していました。

 マンションについても空家問題があり、さらに「スラム化」という言葉も出てきたりして、今後は問題が大きくなっていくのではないかと思い、本書「2020年マンション大崩壊」を手にとってみました。

 

◆著者、本の概要

 著者である「牧野知弘」さんは、東京大学経済学部を卒業後、ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年にはJ-REATの日本コマーシャル投資法人を上場。

 現在はオラガHSC株式会社、株式会社オフィス牧野の代表取締役として、ホテルや不動産開発・運用アドバイザーのほか、事業顧問や講演活動もおこなっています。

 著者は他にも下記のものがあります。

 どれも不動産関連の内容で個人的に気になるものばかり。今後読んでみたいです。

 本書の内容も不動産に関するもので、著者が今まで関わってきた仕事の経験や現在の統計情報や今後の予測などを元に今後マンションがどうなっていくかについて書かれています。

 他の著書でもふれている「空家問題」の現状と未来を統計から読み解くところから始まり、マンションのスラム化は今後地方だけの問題ではなくて、都心部でも始まるということ。どういう経緯でマンションがスラム化していくのか、タワーマンションの問題点、現在の不動産施策に関する問題とそれに対する提言などがかかれています。

 全体的にわかりやすく、不動産に関する知識がない方でも楽しめますし、不動産業界に関する知識がある自分としても楽しめました。

 

◆本の産まれた背景と気付き

 マンションというと数千万円ないと買えないというイメージがあると思いますが、実際には投げ売り状態で10万円という金額で売られているという情報の紹介から本書は始まります。結構話題になった新潟の「越後湯沢」のリゾートマンションの話で、バブル期に作られたけど現在では人気がなく、さらに維持管理も大変なため投げ売り状態で売られているという話ですが、実際には管理費、修繕積立金などの滞納があったりするので、購入者はそれを負担しないといけません。

 この話は最初「月曜から夜ふかし」という番組で知ったのですが、その後、似たような記事がヤフーニュースにも現れてきました。

 「そりゃリゾートマンションなんて今人気ないでしょ」という人もいると思いますが、実際にはマンションのスラム化はリゾート地だけではなくて、地方、さらに都心部にまで広がっているそうです。東京の池袋が「消滅可能性都市」になっているという理由も一つは「ワンルームマンション」が多いからだそうで、そういったマンションの問題点を本書ではとき明かしています。

 本書を読むと現在の建築、不動産に関する政府の施策がこのままではいけないと気がつくでしょう。現在の施策は新築を促すために新しい建物に関する補助金や減税が多いのが現状ですが、そのせいでどんどん古い空家が増えて、現状では全国で820万戸、13.5%が空家になっています。日本で一番空家率が高い山梨県では20%近いというので、5軒に1軒は空家になっているという状態です。

 戸建てよりも問題なのがマンションの空家であり、マンションは一個の大きな共同体でありその維持管理にはコミニティの形成が不可欠なのですが、現在はそれが壊れているということが問題であると指摘しています。

 最近人気の「タワーマンション」もいいことばかりでなく、その問題点についても説明してくれていて読み応えがあります。

 本書を読むともし今後不動産を購入するのであれば結局は「場所」であり、大切なのは「駅前」であるということに気が付かされます。

 

◆こんな人におすすめ

 やはり現在マンション、不動産の購入を検討している人に読んでもらいたいですが、もしかしたら読むと不動産を買えなくなってしまうのかもしれませんが、「自分が買う理由」を書き出し、本書で指摘されているような問題点がないかどうかしっかりと検討すれば変な買い物にはならないと思います。

 あとはマンションを相続するかもしれない人についても、今後早めに対策を取るために本書を読んでおくと良いと思いました。

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