以前、「TOKYO 0円ハウス」という本を読みました。
著者が東京のホームレスの家をちゃんとした「家」として認識して細かく調査して、その家の機能や作り方、更にはそこに住む人たちの生活の仕方なども詳細に調査した本でホームレスの人たちの生活を疑似体験できたような感覚になる面白い本だった。
この前、本屋に行っていろいろと見ていたら、たまたまこの「TOKYO 0円ハウス0円生活」の 著者の新しい本があったのでついつい買ってしまった。
本の題名は、「独立国家のつくりかた」
帯には「一人で、0円で国を作った男の記録」と書いてある。
あのホームレス研究家の建築士が何をしているのか?今度はまた何かおもしろそうなことを見つけたのか?と、気になって誘惑に負けてしまった。
今回の本は今までやってきたことと、やってきたことの理由、そして今やっていること、思考や行動のルーツ、そして現代社会に対する考え方などが書かれていました。
ざっくり紹介すると、著者は慶応義塾大学で建築学を専攻していたが、日本の建築のあり方に疑問を持ち、いろいろと考えているうちにたまたまホームレスが作っている0円の「家」に興味を持つようになって卒業論文を書き、その論文を卒業後出版し、更には現代芸術やパフォーマンス芸術として扱われるようになって、自分の個展を開くようになったり絵を描いて売ったりしている人です。
更には、東日本大震災の後には熊本に移住して福島の子供たちを熊本に招待するサマーキャンプを開催したりもしています。
とても行動力の有る人で、自分の卒論を出版社に売りこんで本にしてもらい、本になったら今度は本を持って海外に売り込みにいき、海外でも本を売ったそうです。
そして、本の主題にもなった「独立国家」を日本で作りました。
その背景として著者の坂口さんは以前から社会のあり方に子供のような率直な疑問を抱いていたそうです。
土地は誰の物なのか?
土地はもちろん法務局へ行けば誰が持っているか登記を確認することが出来るので、誰が持っているかはわかりますが、そもそも地球にある土地を人間の持ち物として固定することがおかしいとか、根本的な疑問を持っています。そして、そのことに抗議するために戦ったり破壊したりしないで、別の視点で世の中を見て誰の土地でもない土地を見つけ、または誰でも使って良いという土地を集め独立国家の領土を増やしています。
さすがに、何やっているのかと親にも心配され、病院に連れて行かれたそうですが、実際にこの方鬱病を患っているそうです。
そして、自殺しそうになる鬱期には鬱と戦い、更にはその鬱を思考の栄養にしてがんばっています。
最後の方は考え方が激しすぎて本当に自殺しちゃわないか心配になりましたが、考えすぎると鬱になったりするのでしょう。
しかし、自分も世の中で決まっているということ、しかも、建築や不動産の世界には疑問がたくさんありましたので坂口さんの言っていることは共感出来ます。
今後日本の空家率が43%になるというのに、なんで日本中で35年間もローンを組んで家を建てるのか疑問です。
家を買わない人が増えていると言われますが、当然だと思いますし逆に個人的にはまだ今でも建ちすぎている気がします。
建築、不動産の仕事をしてきましたがみんな無理してローンを組もうとします。そして、家を買うときに買うのを止める人ってまわりに一人もいないんです。銀行も不動産屋もハウスメーカーも先に家を買った友達も、みんな家を買うことを進めますが本当にそんなに簡単に35年間のローンを組んでいいんでしょうか??
坂口さんもそこに疑問を抱いて、土地を買わなくても建てられる家や移動出来る家などを作ってます。それらは、ホームレスの人たちの家や生き方、考え方を参考にして作られたそうです。
日常で考えることを放棄して、世間に流されている人に警鐘をならしていますが、確かに今の世の中、子供が疑問に思うようなことがそのまま放置されすぎているような気もします。
事実を検証し自分の頭で考えて結論を出し、その結論を信じて行動するということをこの本から教えられました。