AIが台頭してくると仕事を奪われるという恐怖を煽るメディアが多いですよね。
個人的には「AIに奪われる」というより「AIにできることはAIにやってもらう」という考えなので、AIが活躍してくれるところはどんどんAIにお願いして、もし自分の仕事がAIに代替されるのなら違うことをすれば良いと思っているのですが。
AIは前提にある情報を頼りに論理的に考えていくことが得意です。
しかし、飛躍した発想をしたり、突拍子もないことを考えるのは苦手です。
そんな考え方は「ラテラルシンキング」と呼ばれていて、今注目されています。
「ラテラルシンキングって何?」という方のために、ラテラルシンキングをわかりやすく解説した本「ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門」を紹介します。
ラテラルシンキングって何?
ラテラルシンキングとは日本語で言うと「水平思考」。
別の考え方として「ロジカルシンキング(垂直思考)」があります。
ラテラルシンキングは物事を多角的に見ることで、ロジカルシンキングは物事を掘り下げて考える考え方。
ロジカルシンキングはA→B→Cというように物事を順番に積み上げながら、筋道立てて正解を導いていく考え方ですが、ラテラルシンキングは解決策を導くための順番は関係なく、いきなり答えに到達しても良い考え方です。
ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門 /あさ出版/木村尚義
例えば携帯電話。
携帯電話が発売された当初はとても大きくて肩からかけるベルトがないと持ち運べないほどのものでした。
それを高機能にしようと日本企業ががんばった結果、どんどん携帯電話は小さくなり、液晶画面は白黒からカラーになり、折りたたみができるようになり、カメラが付き、メールが送れるようになり、テレビが見られるようになりました。
どんどん小さく機能が増えていった日本の携帯電話は一時期は世界で一番高機能になりましたが、そこに登場したのがiPhoneです。
一つ一つ機能を追加するのではなく、ユーザーが後から好きなように機能(アプリ)を追加できるようにして現在のスマホの元になりました。
日本企業はこういった既存の商品をより良くするための改良が得意です。しかし、この作業はAIが得意な分野でもあり、今後同じ分野で戦えばAIが仕事を奪っていくでしょう。
(ちなみに、音楽は大きなステレオで聞くものという概念を打ち破って大ヒットしたソニーのウォークマンの事例もあるので、一概に日本企業が既存の概念を覆す商品を開発できないわけではないと思います。)
AIに仕事を奪われないようにするには、ロジカルシンキングの考え方だけではダメで、ラテラル・シンキングの考え方が必要になってきます。
「じゃあ、ロジカルシンキングはダメで、ラテラルシンキングの方が良いってこと?」と言うとそうではなく、どちらにも良さがあります。
ロジカルシンキングでどうにも解決できない問題に出会ったときにラテラルシンキングをしてみるなど、問題解決のための手段の一つとして活用すると良いです。
ラテラルシンキングの訓練方法
では、どうしたらラテラルシンキングの考え方ができるようになるのでしょうか?
その方法は本書で紹介されていました。
- ブラックボックス
- ホンミュラ人との対話
- 制約発想と自由発想
- 着ぐるみシンキング
- 広告ミックス
- 先読みイマジネーション
- 廃棄物マッチング
- スーパーポジティブ思考
1の「ブラックボックス」は、「理想」と「現実」の中間の解決策を考えるというトレーニング。
2は「ホンミャラ人」という未知の生物を想像して、その生き物に身近にあるものを説明するというトレーニング。
「ハンカチって何?」など、身の回りにある当たり前のものを深堀りして考えることで、物事の本質が明らかになり、抽象化する力が身につくそうです。
3は物事にあえて制約を設けたり、制約を外したりすることで発想を引き出すトレーニング。
4は別の誰か、何かになりきって考えるトレーニング。
5は雑誌やテレビなどの広告の単語をつなげてみたり、組み合わせたりして発想を鍛えるトレーニング。
6は新聞や雑誌の新商品やサービスの記事を読み、それがどんな影響をもたらすのか想像するトレーニングです。
いろんな方法のトレーニングを積むことで、現在抱えている問題の新しい発見の糸口が見つかるかもしれません。
家庭や会社でラテラルシンキングを推進するために必要なこと
ラテラルシンキングの良さやトレーニングの方法を紹介しましたが、せっかくのラテラルシンキングで得たものを活かすにはもう一つ重要なことがあります。
それは「発想を否定しないこと」。
部下が突飛な発想をしたときに、
「そんなことはできるわけない」「現実を考えろ!」「じゃあ自分で勝手にやれ」などと反射的に頭ごなしに否定したり、意見を受け入れようとしない上司がいますが、これでは自由な発想が出てきません。
なんとなく日本の古い会社だと「ゴールとそれに向かう道筋をセットで提案しないと受け入れない」という文化が多い気がします。
せっかく組織という形で大勢の人がいるのですから、誰かが考えたゴールに対しての道筋をみんなで考えても良いんじゃないかと思いますが、なかなかそんな会社ないのが現状ですよね。
子供って大人とはまったく違った発想をするので、それを活かすような子育てをすることも大切です。
子供が突拍子もないこと言ったときに「そんなことできるわけないでしょ」と言わないで、「それ面白いね!いっしょに考えてみようか」などと話を膨らませてあげることが、子供の創造力を育む練習になるでしょう。
とはいえ、忙しいとなかなか余裕のある対応が難しいので、常に心に余裕を持つように心がける必要があります。
ラテラルシンキングを活かした会社や子供は未来においてITと戦える組織、人になるのではないでしょうか?
ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門 /あさ出版/木村尚義