限界集落にネットアイドルが来て、廃館寸前だった温泉旅館を盛り上げて、街おこしにつなげていく物語です。
最初は突拍子もない設定だと思っていたのですが「限界集落」というキーワードが気になって、読んでみました。
現実的な問題と現実的な解決策も登場して、内容の濃いマンガでした。
限界集落(ギリギリ)温泉の内容
東京でバリバリ働いていたゲームプロデューサーが、仕事から逃げて伊豆の山奥に来たことから話が始まります。
洞窟で暮らしていたのですが、廃館寸前だった温泉旅館に居候することになり、その温泉旅館の再興を手伝い始めます。
そこに、ネットで有名なアイドルが来て、さらにアイドル目当てにオタクが来て、そして、温泉旅館は活気を取り戻しくという話です。
リアルな描写
ここまで読むと、サブカルチャー関係で勝手に盛りがっているだけのような感じだと思います。
しかし、実際には田舎とサブカル文化がどうやって融合したら良いか、田舎からどうやって情報を発信して、人に来てもらうかなどの具体的な解決策が作中に登場します。
最初はサブカル関係で勝手に盛り上がる、非現実的な作品かと思って読みはじめましたが、読み進めると「意外とこういう手法もありなんじゃないの?」 と思えてくるから不思議です。
行政も上手に絡んできます。
作者は作品のために下田市長にインタビューもしたようで、作中にはその市長の考えも登場します。
下田の人たち
地元の人たちがみかんをいくらで農協に卸しているなどの細かい数字も出てきます。
著者の出身地である伊豆の下田を舞台にしているらしく、伊豆の景色の描写や、人間関係、田舎の人付き合い、方言などがリアルです。
おたくたちに話しかけるおばあちゃんの、
「結婚はまだか?
結婚して子供を産むのが女の一番の幸せだ
なんならこの中の誰かと結婚してここに住め」
という田舎でありがちな、おばあちゃんの言葉がリアルでした。
うちのばあちゃんも良く言っています(笑
リアルな描写も多いですが、絵柄がコミカルなので真面目になりすぎないのが良いです。
キャラクターが良い
オタクたちはちょっとみんな同じ様なキャラなのでわかりづらいですが、それ以外の人たちは魅力的です。
特に口先だけで周囲を巻き込んでいくけど、ものすごく行動力のある溝口と、旅館の一人息子で、素直で頭の良い龍之介がお気に入りです。
本当に嫌いになるようなキャラクターがいないので、読了感がさわやかです。
限界集落の再生方法
本作で登場する限界集落(今回は下田という観光地なので限界集落とはちょっと違うかも) の再生方法をまとめると、
・アイドルを住まわせる
・アイドルに群がるオタクを集める
・オタクに住んでもらう
・オタクに作品を作ってもらう
・ご当地限定アイテムにして集客する
・地域が盛り上がる
という感じです。
他にも細かい提案が随所に出てきます。
・地元産の安い食材で新しい料理(カエル)
・まずい地元名物の鍋を紹介
・ボロい温泉旅館をオタクにリメイクさせる
・イベントのネット生中継
などなど。
実際には上記の方法をそのままやろうとしてもうまくいかないと思います。
作中では「意見を否定しない」「やってみる」 を大切にしています。
まずは「やってみる」という精神が一番大切なんだと考えさせられました。
川端康成のエピソード
作中で昔は有名作家に宿に住んでもらって、その部屋に「〇〇の間」とつけて格を上げるということがあったと書かれています。
そういえば伊豆は川端康成の「伊豆の踊子」の舞台。
伊豆の踊子は今まで6回も映画化されるほどの人気作だそうです。
伊豆の踊子による集客効果は今まですごかったんじゃないでしょうか?
そういえば、最近は伊豆の近くの沼津市がアニメの舞台になって集客がすごいようです。
そんな感じで有名作家さんに格安、または無料で住んでもらう代わりに、その地域を舞台として使ってもらうというのも一つの方法なのではないでしょうか?
作家さんも東京にいるよりは、ど田舎に行った方が視点が変わって違う作品が書けるようになるかもしれないし。
なんて勝手なことを書いてみました。
評価
全4巻なので3時間もあれば全巻読むことができます。
後半は特に作者が詰め込んだというだけあって、スピード感があって一気に読み切れます。
読んでいるうちに「自分だったら、こうするかも」「こうすれば良いんじゃないか?」 などの町おこしの考えが浮かんできます。
東京から下田に旅行に行くときに電車の中で読むと、下田を違った目線で見ることができて面白いかもしれません。
自分が読んだときには「kindleアンリミテッド」を利用したので、無料で読み放題でした。