「いのち」や「死」というものは子供に説明するのが難しいテーマです。
はっきりとした正解がないものなので、子供に「命って何?」「人は死んだらどうなるの?」などと聞かれたときに困ります。
そんなときにおすすめの絵本が「葉っぱのフレディ」です。
葉っぱの一年の様子を人の一生に見立てて、子供でも「いのち」や「死」について理解しやすいストーリーになっています。
絵本『葉っぱのフレディ』
基本情報
- 作 レオ・バスカーリア
- 訳 みらい なな
- タイトル 『葉っぱのフレディ ーいのちの旅ー』
- 発行 童話屋
- 読み聞かせ年齢 5歳〜がおすすめ
- 読み聞かせ時間 約10分
葉っぱのフレディはアメリカの哲学者『レオ・バスカーリア』によって書かれた絵本です。
彼はこの本を
- 死別の悲しみに直面した子どもたち
- 死について的確な説明ができない大人たち
- 死と無縁のように青春を謳歌している若者たち
のために書きました。
『葉っぱのフレディ』のあらすじ
ある年の春、大きな木の太い枝に葉っぱのフレディは生まれました。
春風に吹かれて踊ったり、日光浴をしたり、夕立ちに体を洗ってもらったり。
最初は何もわからなかったフレディですが、親友のダニエルに木や自然のこと、季節のこと、公園のこと、自分たちの仕事のことなどを教えてもらいます。
夏になれば涼みにきた人間のために日陰を作ったり、涼しい風を送ったりという仕事をしました。
秋になると葉っぱたちが紅葉しました。
秋が過ぎると、風が冷たくなり始めます。
冬になり仲間の葉っぱたちがだんだんと風に飛ばされたり、枝から落ちていくようになりました。
親友のダニエルは「引っ越しをするんだよ」とフレディに教えます。
フレディはダニエルとの会話で死ぬことが変化の一つであり、経験したことがないことは怖いものだと教えられました。
冬になりフレディも木から落ちていきました。
そして、また春がめぐってきます。
「死」の恐怖をやわらげてくれる
大人になるとある程度麻痺してきますが、子供のときは「死」って漠然としててとても怖いものでした。
ぼくが小学校5年生のときに一緒に住んでいたじいちゃんが死んでしまったのですが、そのときは、
- 人って死んだらどうなるんだろう?
- 自分が死ぬときはどうなるんだろう?
- 死ぬのって痛いのかな?
などといろいろ考えて怖くなったことを覚えています。
そんなときに明確じゃなくても何か答えのようなものがあれば、気持ちが落ち着いたと思うのですが、その答えの一つが「葉っぱのフレディ」じゃないでしょうか。
葉っぱのフレディでは「死」を「変化のひとつ」と表現しています。
季節が春から夏になることや、秋になって葉っぱの色が緑から紅葉することなどと同じように、死も変化の一つだと。
そして死が怖いのは、まだ経験したことがない変化だからと説明しています。
死を変化の一つとして考えると、死にたいして少しだけ前向きな気持ちになれました。
「人生」疑似体験できる
葉っぱのフレディが経験する葉っぱにとっての1年はまるで人間の一生のようです。
葉っぱとして産まれて、友達と遊び、そしていろいろなことを学び、人を喜ばせる仕事をし、だんだんと周りが死んでいくなか、自分も死んでいく。
秋になりフレディは死を予感して、
「ねえ ダニエル。ぼくは生まれてきてよかったのだろうか。」
とダニエルに聞きます。
ダニエルは深くうなずき、今までの楽しかった思い出を思い出しながら幸せだったことをフレディに思い出させました。
人生は自分が楽しんで、人を喜ばせ、幸せだったのであれば十分生まれてきた意味があるのだとこの絵本は教えてくれました。
「いのち」は生き続ける
この絵本では1枚の葉っぱがなくなっても土に還り、肥料になり木を育てることで「いのち」は生き続けると書いてあります。
人が死んでしまえば1人の人間の存在はなくなりますが、その人が周りに与えた影響、教えたこと、育てたものなどは生き続けます。
子供は生まれてきてくれただけで親を喜ばせる存在だと思うと、人間は存在するだけですでに生きてきた価値があったのだと考えられます。
哲学として大人が楽しめる絵本
この絵本のテーマは「いのち」「死」という答えのないテーマなので、哲学として大人も楽しめる絵本です。
読むたびに自分のなかに新しい考えや発想が生まれる、そんな絵本でした。
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