書評(本)

まんがで読破「古事記」の感想

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まんがで読破シリーズの前回の「罪と罰」に続き今回は「古事記」です。

 

まんがで読破シリーズは、名作で名前は知っているけど、難しそうで読んだ事がないような物をわかりやすくまんがで読めるようにまとめたシリーズで基本的には早いものでは30分くらいで読めてしまうのですが、この「古事記」は登場人物や日本人としての考え方を学んだりするのに時間がかかり、ちゃんと読むと2時間くらいかかる内容で、ページ数は大して多くないですが、ボリュームは多く読み応えがあります。

 

 

   

 

 

・まんがで読破「古事記」とは

古事記とは奈良時代の文官である、「太 安万侶(おおのやすまろ)」が元明天皇の勅を受けて「稗田阿礼(ひえだのあれ)」という人が暗記していた物語や天皇の系譜をまとめたものです。この「稗田阿礼」についてはわかっていないことが多く、女性だと言われていましたが、男性という説もあってどちらもはっきりしないそうです。古事記を読んでみるとわかりますが、あのボリュームを暗記していたなんてすごすぎるというボリュームです。編纂して「太安万侶」についても細かいことがわかっていないようで、生没年ともに不詳です。

同じ頃に「日本書紀」という日本の歴史書がありますが、日本書紀は漢文形式で書かれていて主に外国向けとして作られ、古事記は日本国内向けとして作られました。内容としては日本の神話から国作りの様子が書かれています。

まんがで読破「古事記」の前半では、高校生達がレポートで古事記のことを書くように宿題を出され、先生に助けてもらいながらだんだんと古事記に対する理解を深めながら、古事記を読み進んで行く話で、後半はほとんど古事記に書かれている物語の紹介になっています。

 

 

・古事記の前半

前半は日本という国がどうやって出来たかについての神話です。面白かったのが、日本の神話では最初に無があってそのあと宇宙が出来てから神様が出来るというところです。西洋では神様は最初にいてすべてを作ったというような始まり(だったと思います)ですが、日本では神様はあとから産まれてきています。最初に自然、というか「世界」があってそのあとに神様が産まれて日本を作っていくという考え方の違いが面白いと思いませんか?

その後の、記述も生命が産まれて進化していく過程を表しているような記述で、大昔の話なのに現代の解釈と似ているところに驚かされました。そして、イザナギとイザナミという男女の神様が出来ます。このあたりから多くの神様が産まれて日本の国づくりが始まっていくのですが、その産まれた神様の名前やおこした行動によって国が産まれていくのですが、その行動が読んだだけではわからないですが、考えると比喩を使って実際の国づくりのことを表現していて、このあたりを考えるとなかなか面白い読み方が出来ます。まあ、まんがで読破シリーズなので、ちゃんとこのあたりの比喩の解釈の仕方なども書かれていて読みやすいです。

 

このあたりで本書に書かれている、「日本では学校で日本の神話をならわないよね」という言葉が気になりました。確かに、学校で神話をならった気がしません。なぜ? やはり、古事記などの日本の神話は最終的には天皇家の話につながるので、天皇崇拝につながる恐れがあるから神話を教えないようにしているのでしょうか?

ギリシャ人は学校でギリシャ神話をならうのでしょうか? 世界にはその国にいろんな神話がありますが、その国の神話は自分たちの国の成り立ちを学ぶ上で大切なものだと思うので学校で習った方が良いと思います。

 

・古事記の後半

後半では神話の物語中心で、神武天皇の話と有名なヤマトタケルの話です。これは、かっこよく書かれていますが、進軍して敵を倒して支配を広げたという話です。

今までは、このあたりの話がわかりやすくて好きだったのですが、この本を読むと前半の方が好きになりました。難しい話が多い前半ですが、短い文章にいろんな意味が込められていて読んでいていろんな解釈があることに気がつきます。

後半は結構権力争いの話も出てきたりして、なんとなく夢の無い話のように思えてきますが、やはりわかりやすくて理解しやすいのが古事記の後半だと思います。前半は時間がかかりますが、後半は一気に進むと思うのでがまんして後半まで読み進めてみてください。

 

 

・まとめ

古事記ってもう少し学校で勉強させた方が良いような気がしました。歴史のないアメリカ人にとっては長い歴史があってこの神話である「古事記」に出てくる神様の子孫が今でも生きているなんてことが羨ましくてしょうがないと思うのですが、自分も含め、詳しく知らない人が多いのは残念です。

 

たとえば多くの国の人が集まって話をしたときにアメリカ人が、

「アメリカは世界で一番自由で金持ちの国で、月に行ったのもアメリカだ! すごいだろ!」

と、言っても自由や金持ちなんてあとから他の国も真似が出来るのですが、長い「歴史」というのは簡単に真似することや育むことが出来ません。世界的に見ても1つの国がずっと続いているということ自体が奇跡なのです。そういった事実を古事記の神話を使って説明したら世界でさらに尊敬される国になると思うので、海外に行く人はぜひ読んで行ってください。

アメリカも良いところが沢山ある国ですが、まずは日本の良いところを勉強する必要があるのではないかと思いました。

 

by カエレバ

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