大人は「人が死ぬ」ということについて理解できますが、小さな子供にとっては非現実的すぎてまったく実感がわかないことです。
身近な人が死に直面したときに子供にどうやって説明したら良いか悩んだときにおすすめな絵本が『いつでも会える』(菊田まりこ)です。
絵本を読むことで「死ぬということ」「死んだ人はどうなるのか?」が理解でき、最終的には心のケアにもつながる絵本でした。
絵本『いつでも会える』
基本情報
- タイトル 『いつでも会える』
- 作 絵 菊田まりこ
- 発行所 株式会社学習研究社(学研)
『いつでも会える』のあらすじ
主人公は犬のシロ。
いつも飼い主のミキちゃんと楽しく遊んでいて、ミキちゃんのことが大好きで幸せでした。
しかし、ある日突然ミキちゃんがいなくなります。
シロは、とてもさみしくてミキちゃんを探しますが、ミキちゃんには会えません。
探し疲れて泣きながら目をつむるとミキちゃんの声が聞こえてきました。
いっしょに遊べなくなったし、いっしょにご飯を食べられなくなったけど、いつもそばにいるよという声。
その声を聞いて、シロは目をつむればいつでもミキちゃんに会えるとわかりました。
「死ぬ」ということが理解できる
この絵本でわかることの一つが「死」です。
子供に「死」を説明するのは難しいですが、大好きだったミキちゃんが突然いなくなり、会えなくなることでシロは「死」を理解します。
ミキちゃんに会いたい一心で、探し回ってもミキちゃんはどこにもいない。
小学校5年のときにいっしょに住んでいたじいちゃんが死んでしまったとき、家に急にぽっかりと穴が空いてしまったような感じになりました。
ご飯のとき、いつもじいちゃんが座っていた場所に誰もいない。
いたずらをしてもじいちゃんの怒る声が聞こえない。
いつもよりちょっと静か。
さみしくて会いたくなるけど、会えない存在になってしまいました。
そのような状況は経験すればわかりますが、実際に身近な人の死を経験しないと難しいものです。
この絵本を読むことで死ぬとはどういうことかを、子供でも理解できるようになります。
死を理解させる理由
死を理解できない子供は危ないことでも平気でやってしまいます。
一度家のベランダの手すりにぶら下がっていた子供をものすごく叱ったことがあります。
「ベランダから落ちたら死んじゃうよ。死んだら父ちゃんや母ちゃんにもう会えなくなるんだよ」と言ったら、自分がしたことがどんなことに繋がるのかようやく理解できたようで、長男はわんわん泣き始めました。
後から急に怖くなったようです。
子供の好奇心は育ててあげたいのですが、やはり命に危険なことは辞めさせたい。
「危険」→「死ぬ」→「死んだらどうなる」ということが理解できれば、自分や他人の生命に危険なことは辞めるのではないか。
そのために「死ぬ」ということはどうなるかということを一度理解するのは良いことかもしれません。
死の悲しみを和らげてくれる
絵本の最後ではシロが目をつむるたびにミキちゃんとの楽しかった思い出がよみがえります。
死によって物理的な存在は消えてしまうかもしれませんが、思い出のある人の心の中では生き続けていきます。
ぼくの場合、母親が二十歳のときに病気でなくなってしまいました。
その後、ぼくが結婚して子供ができて子育てをしているときに、ふと「孫を見せたかったな」と思いました。
しかし、もし生きていて孫の顔を見たらどんな反応をするかなと想像すると、想像できました。
そのとき、自分の心の中では生きているということが実感できました。
もちろんいなくなってしまうのは悲しいですし、できるなら生きていて欲しかったです。
でも、死というものは人間にとって誰もが逃れられないもので、それはいつやってくるか誰にもわかりません。
身近な人が死んでしまったときには「こういうとき、あの人はなんて言うだろう?」と想像してみてください。
自分の心の中で想像できたら、その人は今でもあなたの心の中で生きています。
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