ローマの皇帝「ネロ」が皇帝になるところから最期までを描いた作品です。
「機動戦士ガンダム」を描いた安彦良和さんの作品です。
ローマ時代を描いた作品で、本書を読むことでネロやローマ皇帝、ローマの生活などを知ることができます。
あらすじと内容
ネロが皇帝になる前から話しは始まります。
・ネロが母親の後押しで皇帝になるまで
・母親とネロの関係
・ネロの独り立ち
・ネロの血塗られた家系
・ネロの恋愛
・疑心暗鬼に陥るネロ
・キリスト教徒との関わり
・奴隷レムスとの関わり
・孤独
・ローマの火事
・火事の復興
・ネロの最期
という感じで、ネロの生涯を描いています。
宮廷だけの話でなく、奴隷から皇帝の義兄弟になったレムスの視点を入れることで、物語の視点が広がっています。
人間としてのネロ
暴君と呼ばれる理由もわかりましたが、自分のイメージした暴君とはちょっと違う感じでした。
本作で描かれるネロはローマの市民には優しく、むしろちょっと気を使っていました。
自分の周りにいる敵には容赦なく、さらに政治に感心を示さず遊んでばかりいる姿は暴君っぽいです。
しかし、彼が皇帝になるまでを考えると彼自身のせいではなく、その生い立ちと環境がそうさせたのではないかと思えてきます。
周りの人間関係に苦しむ姿を見ていると、当時世界最高の権力者だったのにとても弱そうに見えました。
そんな感じに、本作ではネロを普通の人間として心の弱さを描いています。
皇帝は適任ではなかった
ローマの大火のあとに、ローマ市民の救済や都市の復興をテキパキと指示する姿を見ると、彼は芸術家や学者のような職業があっていたのではないかと思えます。
母親の期待を背負って、母親の計略で皇帝にさせられたネロが少し可愛そうに思えました。
人には向き不向きがあり、たとえ権力者になろうとも、その地位や職務が合わないというのは不幸なことなんですね。
ちょっとガンダムっぽい
1巻の初期は、なんとなくキャラクターがアムロやザビなどのガンダムのキャラクターに見えてしまうことも。
途中のセリフで「坊や」とか「ぶたれたことないのに」なんて出ると「おっ!」と反応してしまう自分がいました。
でも、2巻に入った頃にはすでに気にならなくなって、物語に集中していました。
ネロの名言
ネロが作中で言ったセリフ
「パンと見世物があればそれで満足する
愚かな大衆がな
与えられることに麻痺した
受け身でしかないくせに生意気な
市民という名の大衆」
が、気になりました。
これはローマ時代でも今でも変わらないですね。
大衆は適度に与えらればそれで満足し、静かになる。
多少の不満でも我慢できる。
成長していた戦後の日本がそうだったのかもしれません。
会社も給料が与えられれば、多少の嫌なことでも我慢する。
でも、今の時代は給料が安くなったので、社員は文句を言う。
でも、社長からすれば給料を与えられることに麻痺して、受け身になっている社員にも文句を言いたいのかもしれません。
いつの時代も人は変わらないんですね。
初期のキリスト教が出てくる
2巻の途中からキリスト教との関わりが出てきます。
以前書評で紹介した「マンガで読む名作 聖書〜福音書の世界〜」を読んでおくと、キリスト教がローマに布教していった流れがなんとなく理解できておすすめです。
12使徒の一人「ペトロ」と初代ローマ教皇「パウロ」も登場します。
評価は
全2巻で、2冊読むと当時のローマの様子や皇帝ネロ、当時のキリスト教について学ぶことができる良書だと思います。
もちろん、すべてが史実ではないので、これだけでネロやローマを知ろうとすると無理がありますが、雰囲気を知るには良い本です。
何よりマンガで読めるのが良いですね。
1巻45分くらいで、1時間半で全2巻読破できました。
今回は「kindleアンリミテッド」を利用したので、無料でしたが、1冊600円を払っても満足できる作品だと思います。