久しぶりに時代小説を読みましたが、これは面白い。
今までは戦国時代や幕末など人と人とが殺しあう「戦」がある時代のものを多く読んでいて、江戸時代など平和な時代の話は初めてでしたが、すんなり読めました。
平和な時代だろうと自分の信じるものを貫き通すときには、その人には信念があり、それは「戦」なんだなと思い知らされた作品でした。
◆著者、本の概要
こちらは「上」ですが「下」もある上下巻の構成になっています。
岡田准一主演で映画化もされているようなので、ぜひ見てみたいですね。音楽も久石譲で期待できますし。
ちなみに漫画化もされているようで、それだけ人気があった作品であることがわかります。
著者は1977年に岐阜で産まれ、大学在学中に「黒い季節」で第1回スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。その後はゲーム、映像、コミック、小説とメディアを溶断した執筆活動をおこない2009年に著者初の時代小説である「天地明察」を執筆しました。
本書は江戸時代、徳川政権がだんだんと安定してきた第四代将軍徳川家綱と第五代将軍徳川綱吉の頃に行われた暦(こよみ)の改定に奔走する渋川春海の話です。渋川春海は江戸城で将軍の前でも碁を打ったり、いろいろな人に指導碁と言って碁を教えたりする職業だったのですが、本業には身が入らず趣味である算術(当時の数学)にのめり込んでいました。
しかし、知らず知らずのうちに大きな流れに巻き込まれていき、改暦という一大事業にかかわることになります。
◆本書からの気付き
大きな話の流れとしては「改暦」ということなのですが、改暦という事業は暦に合わせて行われていた文化、風習、行事などが今後も正しく行われるようにしないといけないという難問であり、そのためには星の動きを正確に知る必要があるのですが、そのための計算や計算方法を江戸時代の人たちがすでに知っていたということに驚きました。
本書を読んでいると当時の人達の数学知識はものすごく、中でも天才「関孝和」にいたっては当時世界で一番の数学者ではないかと思えるほど新しい計算方法などを生み出しています。
これらは世界的にすごいことでしょうし、もう少し学校で教えても良いのではないかと思うほどびっくりしました。
自分の中では江戸時代の人たちは天動説なんてものを知らないと思っていたのですが、本書の中で地球儀やさらには天球儀を作成する話も出てきます。本書を読んで江戸時代に生きた人たちの優秀さに驚くばかりです。
暦の改定に関しては一筋縄ではいかないということはわかりますが、本書の中で出た「正しいものが採用されるとは限らない」という言葉は的を得ていると思います。
絶対に正しいということが世の中で採用されないということも多く、そのための根回しが必要なのは昔から変わらず、今でも通用する教訓ですね。
◆こんな人におすすめ
戦国、幕末しか興味がない歴史好きには江戸時代の人々の優秀さ知ることができ、おすすめです。文章も読みやすく、物語に没頭できるので時代小説が初めての人にもおすすめです。
江戸幕府成立からどうやって政権が安定していくのかということも知ることができ、戦国時代ファンは入り込みやすいと思います。特に保科正之が重要な役割になっていて、その後、幕末まで続くような話にもなるので、戦国時代と幕末をつなげる話としても面白いです。
歴史好きの文系だけでなく、小説好きの理系にはおすすめしたいですね。