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【オススメ本】未来が不安な人へ、これから財産を気づくために読んでおいた方が良い本「本多静六 私の財産告白」

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 アベノミクスで景気が良くなったと言われても、給料は上がらないし、ニュースではまだまだ経済不安を煽るような内容ばかりが流れています。

 この「本多静六 私の財産告白」は、明治、大正、昭和を生きた大富豪で、堅実な誰にでもできる資産構築法を提唱していて、未来に不安を感じる人に対する生き方を説いています。

 

・本多静六とは?

 本多静六は1866年(慶応2年)に埼玉に生まれました。もともとは裕福な農家だったのですが、9歳の頃に父が亡くなると、多くの借金が舞い込むようになり、生活は一変して苦しくなります。

 しかし、貧しさに負けず、勉強を頑張り、東京山林学校に入学します。一度は落第しますが、もう勉強して主席で卒業し、その後、ドイツに私費留学してミュンヘン大学で国家経済学博士号を得ます。

 1892年(明治25年)、東京農科大学(現在の東京大学農学部)の助教授となり、「月給四分の一天引き貯金」と一日1ページの原稿執筆を開始します。当初は、辛い生活をしますが、だんだんと貯金が増え、給料が増え、生活が楽になっていき、山林投資や株の投資をして財産を築いていきました。

 本業の大学の講義や研究のかたわら、植林、造園、産業振興など多方面で活躍し、日比谷公園の設計や明治神宮の造林など大きな業績を残しました。

 1927年に(昭和2年)に定年退官を期に、財産のほとんどを匿名で寄付します。

 常に質素倹約をモットーに生きた人で、1952年(昭和27年)の1月に85歳で他界しています。

 

・本多静六の貯蓄法

 本多静六はドイツに留学したときに、当時の先生に、

 いかに学者でもまず優に独立生活ができるだけの財産をこしらえなければダメだ。

 そうしなければ常に金のために自由を制され、心にもない屈従を強いられることになる。

と、言われさらに、

 財産を作ることの根幹は、やはり勤倹貯蓄だ。これなしには、どんなに小さくとも、財産と名のつくほどのものはこしらえられない。

 さて、その貯金がある程度の学に達したら、他の有利な事業に投資するがよい。貯金を貯金のままにしておいては知れたものである。

 それには、いまの日本では(明治二十年代)第一に幹線鉄道と安い土地や山林に投資するが良い。幹線鉄道は将来支線の伸びるごとに利益を増すことになろうし、また現在交通不便な山奥にある山林は、世の進歩とともに、鉄道や国道県道が拓けて、都会地に近い山林と同じ勝ちになるに相違ない。

 現にドイツの富豪貴族の多くは、決して勤倹貯蓄ばかりでその富を得たものではない。こうした投資法によって国家社会の発展の大勢を利用したものである」

と、言われ、大学での仕事のかたわら、貯蓄、投資により財産を作ることを目指します。

 本多静六が最初に心がけたのが「月給の四分の一天引き貯金」でした。当時、そこそこの給料をもらっていたようですが、養う人が多く、9人も養わなければいけなくなったため、結構きつかったようですが、給料の四分の一は最初からなかったものと考えて貯金していったそうです。

 貧乏生活をして、本多静六が気付いたことは、

貧乏に苦労し、貧乏し抜いてこそ、人生の意義や事物の価値認識をいっそう深めることができるのである。貧乏したことのある人間でなければ、本当の人生の値打ちはわからないし、また堅実に、生活の向上を目指していく努力と幸福は生じてこないのである。

ということでした。

 こうして、本多静六は貯蓄を増やしていきました。

 

・本多静六の投資法

 本多静六は貯めた貯蓄を株や山林などに投資していきました。実際に本では、いくら投資したという金額や単位が書かれていましたが、当時の金額なので、今とかなり単位が違っていて、なんとなくしかわかりませんでしたが、現在の価値にするといくらぐらいかはなんとなく文章から伝わってきます。

 当時の日本では、鉄道が引かれて延長していっているので、鉄道の通るような土地や、安くなっている山林を購入したそうです。

 また、株の投資法もかなり堅実な方法を取っています。読んでいて面白かったのは、次に紹介する手法です。

 購入した株が、長い年月の間に2倍以上に高騰することがある

 

ーーー反対に値下がりすることもあるが、この場合無理のない持ち株だからいつまでも持ち続ける。したがって絶対に損はしないーーー

 

 そのときはまず手持ちの半分を必ず売り放つ。つまり投資の元金だけを預金に戻して確保しておく。したがって、あとに残った株は全くタダということになる。タダの株ならいかに暴落しても損のしっこはない。

 これがいわゆる「十割益半分手放し」という法だ。

 確かにこの方法なら、元手は回収して、後は放っておくだけで良いですよね。

 しかし、この方法を実行するときに注意が必要なことに気が付きました。それは、「余剰資産で投資する」ということです。

 この「十割益半分手渡し」は、景気の変動があるような長期の投資を前提としているので、生活ギリギリの金額だと、生活が厳しくなったときに株を売らないといけなくなるため、この投資法に向いていません。投資して最悪なくなっても良い金額を投資して、長期でこの「十割益半分手渡し」をするべきです。

 まあ、投資って基本的には生活と関係ないお金でやることが前提ですが。

by カエレバ

 

・その他の教訓

 著書の投資の他にも、様々な人生訓を残してくれました。

 財産を築いたあとの話では、多くの財産を相続するのは、子どもたちにとって、悪いことはあっても、良いことにはならず、そんなことより、生涯にわたって向上心を持って精進することの大切さ、努力することの大切さを教えることの方が重要だと説いています。

 最初からお金持ちの人は、すでに頂上にいるので、それより上を目指すことは大変だし、いつ落ちてしまわないか心配になるけど、最初に下の方にいれば、下に落ちる心配をすることもなく、上に上がることも簡単だとも言っていました。

 本多静六が生きてきた中で身につけてきた処世術や、人付き合いの方法なども書かれていました。お金の貸し借りはしないなどの基本的なことも多いですが、努力して財産を築いた著書が言うと説得力があります。

 基本的に前編を読んで、飛び抜けて変わったことは書かれていません。投資の方法も「貯金」→「投資」という基本的なことが書かれています。

 しかし、この基本的なことを耐えず注意して、努力してその額を増やしていくという積み重ねはいつの時代でも通用する資産を築くテクニックだと思います。最近でも投資本はたくさん出ていますが、明治、大正、昭和という激動の三時代を生き、財産を築いた著書の本は、すべての投資本の元になるような基本的なことが書かれているため、このような不安定で、先行きの暗い世の中を渡っていくにはぜひ読んでおくと良いと思いました。

 「私の財産告白」の他に

「人生計画の立て方」

by カエレバ

「私の生活流儀」

by カエレバ

という本もあるそうで、本多静六に興味をもったら、あわせて読んでみると良いかもしれません。

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