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「The Mesh メッシュ すべてのビジネスは<シェア>になる」リサガンスキー著 の書評と感想

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先日、本屋でたまたまこの本を見つけて購入しましたが、なかなか面白い本で宝物を見つけたような気持ちになれました。

最近、自分のなかで使い捨て社会や大量消費社会に疑問が湧いていて、何かその未来を教えてくれる本はないかと思っていたのですが、この本がその答えの1つを提示してくれた気がしました。

 

・著者の「リサ・ガンスキー」とは?

この本を読んでいて途中で気がついたのですが、著者は女性でした。本を読んでいて中盤くらいでたまたま一人称が「わたし」になっていて、著者紹介を読んでみたらリサ・ガンスキーさんは女性の起業家でシリコンバレーでは有名な人のようです。

1990年代前半にアメリカで最初の商用ウェブサイトのGNNを立ち上げ、後にAOLに売却、そして、写真共有サイトのOfoto(オフォト)をつくり、後にイーストマン・コダックに売却し、その後オフォトは4500万人以上の顧客を誇るサービス「コダックギャラリー」に成長するなど、複数の先駆的なインターネット関連ビジネスを立ち上げた人です。

その経験を活かして、現在は20以上のインターネットサービス企業、モバイルサービス企業、ソーシャルベンチャーへの経営指導や投資活動にあたっているという面白い経歴の持ち主で、本書の中でもその経験を生かした先見性のある意見が多く見られます。

 

・メッシュとは?

メッシュとは「網(アミ)」という意味ですが、網の目の結び目からさまざまな方向に糸が伸びて行くように、ネットワークが他のネットワークと結びついてどんどん広がっていく、というビジネスのイメージのことです。本書の中でメッシュビジネスを特徴づけるものとして、4つを紹介しています。

1.核となる提供物が、製品、サービス、あるいは原料を含めて、1つのコミュニティや市場、価値連鎖のなかで「シェアされる」こと。

2.進化したウェブとモバイルデータネットワークを利用して、利用状況を追いかけ、顧客データや製品情報を集計すること。

3.シェアできる有形のモノに重点が置かれていること。取り扱われるモノには、地域内の流通サービスを利用した製品で利用客を増やすことや、中古品の再利用や部品のリサイクルによって価値を高めることも含まれる。

4.商品内容、ニュース、お勧めなどは口コミで伝えられ、ソーシャル・ネットワークサービスによってより広範囲に伝達される。

「メッシュ」本文より抜粋

と本書には書かれています。たびたび紹介されているのが「ジップカー」というカーシェアリングの会社です。日本ではまだまだ認知度が低いカーシェアリングですが、このカーシェアリングの先駆者的な会社がアメリカのジップカーです。ジップカーはジップカーが所有している車を会員が使えるようにすることで、車を大勢でシェアする仕組みを整えた会社で、メッシュの特徴となる「シェア」「ネット活用」などを体現している会社です。

車の位置情報をネットから検索出来たり、車の使用予約をネットから出来たりなどの現在のネットのテクノロジーを駆使して利用者に便利で使い勝手の良いサービスを提供しています。

 

・メッシュの利点は?

メッシュビジネスの利点は本書の中でいくつも紹介されています。

1つ目は、「資産の有効活用ができる」ことです。カーシェアリングを例に取ると、ジップカーは車を売り切ってしまってビジネスが完結するのではなく、資産を効率的に回していくことで、利益をあげていくことができ、継続的に資産を活用できます。

2つ目は「新鮮な顧客情報が得られる」ことです。販売業では販売した時点の顧客情報しか入りませんが、メッシュビジネスでは定期的な情報が手に入ります。車のシェアビジネスの場合は、誰がいつどのくらい利用しているかなどの情報が手に入ります。売り切りではなく、定期的にサービスを利用してもらうので、常に新鮮な顧客情報が手に入ることが強みであり、その情報を元にサービスを改善していくことができるという強みがあります。

3つ目は「環境にやさしい」ことです。今までは日本もアメリカも大量生産、大量消費の社会で、売れるかわからないものを大量に作って、在庫になりそうなら大幅値引きして販売し、大量のものを大きな家に押し込んで生活していました。しかし、最近はそういった現状に疑問を抱く人たちも多く、あまり物を買わない人たちが増えてきています。そういった人たちは物をシェアする「メッシュビジネス」を利用するようになり、不必要なものは生産されなくなる世の中になることを助けています。この本を読んでいると、家に2台ある車をとりあえず1台にしたくなってきます。こういった多くの人びとによってメッシュビジネスは成長してきています。

4つ目は「小さな資本でビジネスが始められる」ことです。通常、ビジネスを始めるには物を仕入れて販売して、と大きな資本が必要になりますが、メッシュビジネスは手元にあるものや、周りの人が持っているものを活用することでビジネスにします。物をレンタルしたり、レンタルするものを仲介するというビジネスにはそれほど大きな資本は必要ありません。

などなど、メッシュビジネスには大きな可能性があると本書には書いてあります。

 

・メッシュの感想

2011年の本ですが、すでにメッシュビジネスの新しい会社が次々に立ち上がってきています。日本でも新製品の家電などをレンタルできる

「おかりなレンタル」http://o-carina.jp/

というサービスがありますし、海外発の空いている部屋を宿泊施設に変える

「Airbnb」(エアービーアンドビー)https://www.airbnb.jp/

というサービスもあり、どんどんとメッシュビジネスが増えてきています。

メッシュビジネスは基本的に今ある資産を有効活用していくという内容がほとんどなので、自分が最近思っていた大量消費社会に対する疑問の答えにもなっていると思います。

これまでは「所有」することがステータスであったため、日本の社会では誰もが家を購入するという夢に向かって働いてきました。しかし、不動産、建築の業界で働いた経験から「所有」することに関して疑問を持つことになりました。少子高齢化社会になり、家が余っている状況でなぜみんな家を立てるのだろうと。そして、なんでレンタル倉庫の需要が増えるのだろうと?

これからは物を持つことより、なるべく少なくして身軽に動ける方が良いのではないかと思います。そういう社会にはメッシュのようなビジネスがぴったりだと思い、自分の今後のビジネスの方向性を考えるのに良い情報がたくさんありました。

昔からあるレンタルするという業態を、ネットのテクノロジーを使って再構築するということを考えればまだまだ市場はたくさんありそうです。そういったことを考えさせてくれる大変良い本だと思います。

新規でビジネスを立ち上げる人にはお勧めしたい一冊です。

by カエレバ

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