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「不動産裏物語 佐々木亮」の感想と書評

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 ちょっと前から素人でもできるサラリーマン不動産投資という分野が盛んになり、投資のすすめに関する本が多く売られてきました。そういった本を結構読んできましたが、物件の選び方や数字の管理のしかたなどのテクニックの話ばかりで意外と「泥臭い」話が出てこなかったりします。

 そういう知識しかないと、実際に不動産屋から物件を買うときに良い良いようにあしらわれてしまうでしょう。そういうときのためにこの「不動産裏物語」は役に立ってくれる本だと思います。

 

◆著者、本の概要

 著者は首都圏で働いている現役の不動産屋の社員です。元々は別の業界にいたようですが、その業界の先行き不安で転職を考えたときに素人からでも実力勝負で成功ができる不動産業界に転職しました。本書を読んでいるとバリバリ働いて良い成績をあげている営業マンという感じがしてきます。知識も豊富で行動力があって会話がうまそうな感じが伝わってきます。

 本書は著者が働いている不動産業界の裏話ということで、不動産屋としての「売る側の心理」や危ない不動産屋の手口や不動産の買い時などわかりやすい説明で不動産業界の裏側を書いています。

 不動産屋がお客さんをどう見ているか、お客さんにどういった物件を買わせようとしているか、さらにどうやって買わせるかなど、買う側としては知っておいた方が良い知識が詰まった内容です。

 

◆本の産まれた背景と気付き

 本書は著者が15年関わってきた「不動産」という業界で経験した実体験をわかりやすく物語のようなエピソードを含めて紹介しようと思って書かれた本です。

 自分も不動産業界に関わったことがあるのですが、本書を読んでいると懐かしく感じるとともに業界では当たり前に行われていたのですが、裏側として見るとやっぱり「変わってる業界だなぁ」と気が付かされました。

 不動産業界の構造として「契約」することで初めて「手数料」という名の利益が発生するのですが、そのため「お客さん」よりも「契約」を優先しがちになるのですが、本書でもこのことが書かれています。不動産の購入は一生に一回ということが多いので、一度のお客さんの長期的な満足度を優先するよりも、とりあえず契約するまでの「短期的な満足度」を優先しているという裏側についてわかりやすく書かれているので、今後、不動産を購入しようと思っている方は必見です。

 不動産の営業マンはお客さんにコントロールされないようにうまくお客さんをコントロールしようとしています。少しでも利益が高くなるように売り主と飼い主から手数料をもらえる物件を契約させるように誘導するために、お客さんが気に入っている物件を「売れた」「人が死んでいる」などのネガティブワードで排除して、自分がすすめる物件を契約させるようにします。

 こういった売り方をする営業マンが多く、さらにそういった営業マンが成績をあげているのが不動産業界の現状ですが、個人的にはそういった業界の雰囲気は良くないと思っていました。著者もそれに気が付き初めて、自分の先輩がお客さんの「長期顧客満足度」を高めることでお客さんがお客さんを紹介してくれる好循環の営業方法をしていることを紹介しています。

 

◆こんな人におすすめ

 この本をおすすめするのはずばり「これから不動産を買う人」「不動産業界に入ろうと思っている人、入ったばかりの人」です。

 これから不動産を買う人については「住宅購入ガイド」みたいな細かいチェックリストや税金の話などが載っている本と合わせてこの本を読むことで、失敗しない不動産購入ができるでしょう。

 さらに不動産業界内部の人でなかなか成績が上がらない人には先輩のテクニックのような本書が営業力を上げる上で役に立つと思います。 

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