日本人の宗教と言えば神道と仏教ですが、神道については全然知識がないことに気が付きました。そのくせ神社に行ってお祈りもするし、初詣にも行くし。
知らないでお参りに行くよりも、知ってから神社に行った方が今よりも神社への参拝が充実したものになると思って神道の勉強を始めるためにアマゾンで神道の本を探していたところ、初心者でもわかりやすそうだったので購入しました。
◆著者
著者である武光誠さんは1950年山口県生まれ、東京大学文学部国史学科を卒業しています。さらに東京大学大学院博士課程を修了し、現在は明治学院大学の教授をしています。
専攻は日本古代史ということもあって、日本史関連の著書を多数出版しています。
◆本の概要
本書は初心者でもわかりやすく神道について説明してくれている本です。
神道の産まれた背景や、当時の生活、神道と天皇家の関係、神道と仏教の関係、神道と日本の歴史の関わり、神について、神道の祭事、祭り、神社について、結婚式、日本の行事と神道など歴史的なことから神道が関わっている身近な生活についてのことなどについて解説されています。
正直、神様の名前などを頭に入れながら読もうとすると結構たいへんなので、とりあえずは興味があるところから読んでいくと頭に入りやすいのではないかと思います。
◆本の産まれた背景
日本人の生活には神社や神道系の行事など、神道から来ているものが密接に関係しているにもかかわらず、神道について知らないことが多いのではないかということで、その歴史と実態に迫ってみるためにかかれました。
神道について学ぶことで日本という国の実態も見えてくるという狙いもあります。
◆本書からの気付き
まず、神道はなぜ「教」や「法」ではなく「道」なのかというと、日本の神様は人の上にたって教えたり方で縛ったりしないからです。そのため一人ひとりが考えて生きることが必要であり、他の宗教とくらべてかなりゆるい感じです。「神道」は人が信仰することで神がいることになり、人が中心の宗教です。
そして、神道の中では神様に序列や上下関係などがなく、最終的には信仰するものすべてが神になりえます。だから日本の中で仏教と神道が混在して混ざり合っているような形でもうまく共存していけています。
戦国時代に入ってきたキリスト教も人によってはキリスト教の神を唯一の神と考えるのではなくて、神道の考えのなかのたくさんいる神の中のひとつと考えていたところもあるそうです。
多神教で序列がなくなんでも受け入れるということは排他的な要素がないため、宗教上の争いがありません。そう考えると唯一神を信仰し、排他的な「キリスト教」「ユダヤ教」「イスラム教」と比べると神道はとても平和的な宗教だと言えるのではないでしょうか?
本書を読んで、自分は神道について知らないことがとても多いということに気が付くとともに、これだけ日本人の歴史と深いかかわりがある宗教についてなぜ学校で教えないのかということに疑問を持ちました。
戦前は歴史といえば「古事記」からで、考古学的知識の縄文時代などは一切教えなかったそうで、それも偏りがありますが、日本人のアイデンティティの一つである神道と神道とつながる天皇制についての勉強が学校でほとんど行われないのはちょっと異常だと思います。この2つは本書を読んでもわかるのですが、日本という国が形成されていく中で必要不可欠なものであるため、学校ではもう少し詳しく教えるべきでしょう。
幕末の時代には徳川幕府が推奨した中国から来た儒学ではなく、日本の独自の学問「国学」がはやりその思想が「尊王」「攘夷」につながり、明治維新の原動力になりました。このように国に危機がおとずれると日本独自の文化が見直され、神道の理解につながるので、現在のように中国などの外圧がある世の中では神道を勉強する人も増えるのではないかと思います。ただし、単純な「尊王」「攘夷」思想は危険であるとも思いますが。
本書には「鳥居」「注連縄(しめなわ)」「参拝」の意味、「神宮」「大社」の違い、神社ではなぜ鈴をふるのかなど身近な疑問に対する答えも多く書かれていて、そのあたりはとても読みやすいです。前半は難しいので、最初は後半の身近な話のところから読んでも良いと思います。
◆こんな人におすすめ
神社の儀式について知りたい人、日本人の独自の文化の成り立ちなどを知りたい人におすすめです。単純に「神道って何?」という疑問について知りたい人にはとても良い本でした。